溶液化学研究会 Japanese page only.
> 研究会のご案内 > 会長からのメッセージ
会長就任挨拶

山口敏男
福岡大学理学部

 2015年4月1日から冨永敏弘前会長の後を継いで、溶液化学研究会の会長に就任することになりましたので、ひとこと就任の挨拶を述べさせていただきます。

 日本における溶液化学の歴史を振り返ってみますと、「溶液化学」という学問領域が生まれる以前は、物理化学、分析化学、錯体化学において水や種々の溶媒が関わる物性や反応の研究がそれぞれの学問分野で行われていました。私が大学院生の時代に、恩師である大瀧仁志先生を中心に、各学問分野で溶液が関わる研究をされている諸先生が集まり研究会が定期的に開催されるようになりました。その当時の溶液化学の中心はヨーロッパ(特にスウェーデン、イギリス、ドイツ)で、溶液化学の国際会議が定期的に開催されておりました。そのような世界の潮流の中で、大瀧先生は日本において溶液化学という学問分野を作るために尽力され、1982年に「溶質-溶質-溶媒間相互作用に関する国際会議」 が箕面で開催されました。翌年の1983年に現在の溶液化学研究会が結成され、初代会長に大瀧仁志先生が就任されました。その後、野村浩康、中原勝、平田文男、冨永敏弘歴代会長を経て、2015年は32年目を迎えます。研究会結成以来、溶液化学シンポジウムが毎年開催されてきました。その間、1999年に第26回溶液化学国際会議(福岡)、2007年にEuropean Molecular Liquids Group/Japanese Molecular Liquids Group Meeting(福岡)、2013年第33回溶液化学国際会議(京都)を日本に招へいして、日本の溶液化学研究が世界の研究者に認知されました。現在では、溶液化学に関わる研究者組織を含めて、日本は世界の溶液化学をリードしているといっても過言ではありません。

 溶液化学は、物理化学、分析化学、無機・錯体化学、生物化学、地球科学、医学、薬学に渡る異分野横断の学問分野です。現在、溶液化学に関する学会として、日本化学会を始め、日本分析化学会の溶液反応化学研究懇談会、電気化学会の溶液化学懇談会、化学工学会の超臨界流体部会、日本中性子科学会の液体・非晶質材料分科会、イオン液体討論会、分子シミュレーション討論会、分子科学討論会、生物物理学会、高圧討論会、錯体化学討論会等において、溶液化学研究会の会員が参加して活発に研究発表を行っています。このような現状の中で、溶液化学研究会は、種々の学問分野において溶液が関わる物性や反応・機能に関する正しい理解と解釈を与えることに重要な役割を果たす必要があります。また、溶液化学の研究を行う若手の研究者の育成と溶液化学研究会をグローバル化することも必要です。現在、Journal of Molecular Liquids (Elsevier)のEditor-in-Chiefを努めていますが、中国やインドから多くの投稿があります。隔年毎に開催されているEurasia Conference of Chemical Sciencesは大瀧仁志、I. Bertini、B. M. Rode教授がアジアの開発途上国の研究者を育成するために設立された学会です。溶液化学の研究で世界をリードしている日本はアジア諸国の溶液化学の発展に貢献することが期待されています。

 寺嶋正秀運営委員長を始め、運営委員の皆様と一致協力して溶液化学の発展に貢献していく所存ですので、今後ともご協力の程よろしくお願い申し上げます。


〒606-8502 京都市左京区北白川追分町 京都大学大学院理学研究科化学専攻
光物理化学研究室内 溶液化学研究会事務局
Tel: 075-753-4026, FAX: 075-753-4000, e-mail: jimukyoku<at-mark>solnchem.jp
(c) The Japan Association of Solution Chemistry