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会長からのメッセージ
会長からのメッセージ

会長就任の挨拶

中原 勝
京都大学化学研究所
(新名称:環境物質化学研究系、分子環境解析化学研究領域)

 昨秋の総会決議により、2004年4月1日から野村浩康先生の後を継いで会長に就任することになりました。就任の挨拶を申し上げます。

 物質には気体・液体・固体の三態が存在し、ほぼそれぞれに対応する学会組織が国内に存在する。我々の学会組織は液体・溶液状態の分子集合体を研究する人間集団と定義される。物理化学、分析化学、錯体化学、生化学の分野で活躍する会員の集合する組織である。分子構造に力点のある分子科学・量子化学や計算機科学との関係も深い。組織の特徴はどこにあるか。学会を所詮寄り合い所帯として“お茶を濁す”か、異分野間にこそ新しい問題があると真剣に捉えるか、問題発掘の挑戦の場とするか。学会は会員のためのものであり、その存亡は会員各位の心構えと考え方に依存する。理論家と実験家がよりよい緊張関係を保ち、溶液のマクロ・ミクロ、構造・物性・反応についての学理を追究し、人類社会の発展に貢献する学会組織であって欲しい。何がわかれば自然を理解したといえるか、我々は自然をどこまで理解したといえる状態にあるのか。大きな自然環境・エネルギー・生命の現象への興味から始まり、その現象を支配する重要因子を突き止め、支配因子間の相関関係・関数関係を発掘することが大事である。定性的段階、粗い近似の段階に新しい発見があるかもしれない。

 科学と社会の関係の有り様が世界的規模で変容しつつある21世紀初頭です。今我々は歴史的変化の胸突き八丁を体験しているわけです。社会に組み込まれた学術研究であることを“納税者は求めている”、とのことです。資源の乏しい経済大国日本も世界と同じ流れの中にあって、科学技術基本法を制定し、国家的規模で、独自の科学技術政策を始めました。どんな研究をしてもお金の回り目が良くなるのではなく、真に画期的な研究と重点4領域に手厚い資源配分がなされます。競争的研究費が増大し、均分的予算配分が縮小される傾向にあります。これは法人化による路線変更であり、ゆっくりとではなく予想以上の速度で進行すると考えられます。変化が止まって元に戻ることはないでしょう。明治維新に行われた我が国最初の教育体制の構築、その後の学制改革、それらのどれとも比較にならないほど大きな“国立大学”の変貌期といえるでしょう。“納税者の求め”に従って、その意(?)を正しく理解して、学術研究という国境の無い世界で、我々の存在感を示す生き方が求められる時代です。いかなる大学であれ、それにふさわしい存在感・個性・独自性を示す必要があります。ある意味で“研究の戦国時代”を迎えたのかもしれません。

 大学人として、教育研究に専念することはもちろんのことですが、研究の社会への貢献が一層求められます。様々な対応方法がありますが、学会活動もそのひとつに位置づけされるでしょう。その機能と役割の一翼を担う溶液化学研究会であるべきです。溶液関連の諸問題に関しては“溶液化学シンポジウム”での発表・討論が最も充実しており、溶液化学研究会が他のいかなる学会にも劣らないという普通のことを堅持することが大事です。創意工夫によって大きな存在感・存在価値を築くことが必要です。人間と自然の関係を考えながら、価値ある問題意識と新しい発見を誘起する相互作用・交流を期待してやみません。

 実務はすべて平田運営委員長の手中にあり、私の役割分担は学会組織のまとめ役でしょう。自分の経験を生かして、現代と未来の可能性を考え、教育と研究のよりよい発展について良識を示したい。皆さんのご支援とご鞭撻を願う。

〒606-8502 京都市左京区北白川追分町 京都大学大学院理学研究科化学専攻
光物理化学研究室内 溶液化学研究会事務局
Tel: 075-753-4026, FAX: 075-753-4000, e-mail: jimukyoku<at-mark>solnchem.jp
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