溶液化学研究会 Japanese page only.
会長からのメッセージ
会長からのメッセージ

会長就任の挨拶

 分子科学研究所の平田文男でございます。この度、中原前会長の後を引き継いで、溶液化学研究会の会長を努めさせていただくことになりましたので、ひとこと、就任の挨拶を述べさせていただきます。

 5年前の「大学法人化」以降、「学問と社会」を巡る環境が大きく変化しています。特に、昨年の終わりに行なわれた政府の「事業仕分け」作業は、我々、アカデミズムの人間に衝撃を与えただけでなく、一般の国民にとっては「学問」や「科学」を身近な問題として考える重要なきっかけになったことでしょう。そのような視点で見ると、最近、テレビ番組でも科学の成果を分かりやすく紹介する番組が増えていることにも気づかれることでしょう。この変化には二つの要因が絡みあっていると思います。ひとつは一般の国民の中で科学に対するニーズや期待が大きくなっていること。もうひとつは最近の科学の進歩によって、生活や生産の場で現れる複雑な現象を真に科学の言葉で解き明かす可能性が出て来ていることです。

 そもそも「科学」は人類がその生活現象の中で生じる様々な「不思議」を解き明かすために営々として積み重ねてきた知的作業の集大成であり、その結果として、物理学が生まれ、化学が生まれ、生物学が生まれ、それらの学問は陰に陽に我々の生活の現場で使われてきました。しかしながら、それらは未だ現在人類が直面している難問、例えば、「認知症」などに代表される難病や、今、国際的に最も関心の高い「エネルギー・環境」などの問題を解決する科学的な処方箋を見出すにいたっていません。もちろん、このような難問の解決はひとり「自然科学」だけではなく、政治、経済を含む社会全体の協力した取り組みによって初めてなし得ることですが、一方、その技術的前提を確立する上での科学の役割は計り知れません。中でも、「溶液化学」は「医療」や「エネルギー・環境」問題の解決にとって、本質的役割を演じる可能性を秘めていることを指摘したいと思います。何故なら、これらの問題には常に「生命現象」が絡んでおり、また、その「生命現象」の前提条件として「水」と「水溶液」が存在するからです。

 ご承知のように「溶液化学」の歴史はvan der Waals, van’t Hoff, Arrehnius, Kohlrausch, Boltzmann, Langevin, Born, Debye, Onsager, Kirkwood, Mayer, Bjjerum, Hildebrand等々、化学、物理における巨人達の名前で彩られています。私達、溶液化学研究会がその歴史と伝統を守り、継承する使命を帯びていることに疑問の余地はありません。しかしながら、それは単に先人の業績を保守的に「守り、継承する」という意味ではなく、現在の学問の発展のレベルに対応し、時代の要請に応えうる新しい「溶液化学」を造り出すという意味でなければならないと考えます。幸い溶液化学研究会のメンバーには、今度、運営委員長に就任されました寺嶋先生をはじめとして、新しい学問分野の確立に意欲を燃やす若手・中堅研究者が、多数、活躍されています。私も微力ながら我が国の溶液化学研究の発展に力を尽くす所存でございますので、今後ともよろしくお願い致します。

平田 文男
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 分子科学研究所


前会長のメッセージはこちら

〒606-8502 京都市左京区北白川追分町 京都大学大学院理学研究科化学専攻
光物理化学研究室内 溶液化学研究会事務局
Tel: 075-753-4026, FAX: 075-753-4000, e-mail: jimukyoku<at-mark>solnchem.jp
(c) The Japan Association of Solution Chemistry