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会長からのメッセージ
会長からのメッセージ

立命館大学理工学部  大瀧仁志

この度はからずも溶液化学研究会初代会長に就任することになりました。まことに光栄の至りであります。
そもそも溶液化学研究会は当初は会則も役員もない、まことに雑然とした研究者の集合体でありました。研究会も小さな一つの会場で討論を行う、家庭的な仲間集団の会合でした。その前駆体としてはいくつかの科学研究費補助金による総合研究がありましたが、毎年メンバーがかわる総合研究班では、きちんとした組織は形成されませんでした。
最初の組織化は昭和53年に電気化学協会に「電解質溶液の化学懇談会」が設置されたことから始まります。この懇談会は昭和55年に「溶液化学専門委員会」に昇格し、協会から補助金をいただくようになり、また電気化学協会の年会などに合わせてシンポジウムを開催するなどして、ようやく今日のような研究活動、すなわち溶液化学シンポジウムを中心とした溶液化学の研究活動が軌道に乗るようになったのであります。
昭和53年の電気化学協会第45回大会における「電解質溶液の化学」シンポジウムをその誕生として発足した「溶液化学シンポジウム」が学会としての形態が整えられるようになってくると、次第に対外的な問題も生じてくるようになり、電気化学協会の一専門委員会としての組機の外に、独立した研究会組織の確立が必要になって参りました。このような経過から、昭和59年に電気化学協会の専門委員会とは別の組織として溶液化学研究会が設立されました。この辺のいきさつに関しましては電気化学協会60年史(1993年刊行)に野村浩康氏がくわしく述べておられます。また研究会の体裁をえるために平成元年になってようやく溶液化学研究会会則が制定されました。しかしその際制定された会則はきわめて大雑把なもので、研究会でありながら責任者としての会長を置く規定がありませんでした。これは必ずしも会則が杜撰であったわけではなく、会則制定に際して一ニの長老の先生方にご意見をうかがったところ、会長設置にご賛同が得られなかったためでした。そこで、事務局の責任者が運営委員長として溶液化学研究会の事務を掌握し、あわせて電気化学協会の溶液化学専門委員会主査を兼任する形式をとってきたわけであります。

溶液化学シンポジウムは年々盛況になり、いまや押しも押されもしない、わが国における唯一の、しかも他の分野の研究会や対論会にひけをとらない、立派な研究発表の場に成長いたしました。このことは一重にシンポジウムに参加され、研究成果を発表され、討論を盛り上げてくださった研究者の皆様のお蔭であります。一方、このように立派な研究会になると、会場の設定や、援助金の申請等の際にどうしても責任者としての会長が必要になって参ります。そこで今回、会則を改訂し、会長を置くこととなり、運営委員会で検討の結果、私が選任された次第であります。今回は手続きのための時間やその他いろいろの理由から、会長の選出は運営委員会でおこなわれ、総会でご承認をいただくという方式になりましたが、本来は会員の総意がもっと反映する方法をとるべきであると考えております。この点につきましては、今後の検討課題とさせて頂きたく存じます。
この数年間、溶液化学に関する研究が文部省科学研究費補助金の重点研究課題に採択されたり、あるいは溶液化学に関するさまざまな国際会議が国の内外で実施されるようになってきました。特にこれらの国際会議における日本人溶液化学者の活動は目ざましいものがあります。まことに喜ばしいことであります。我々が重点領域研究を実施しております際に海外評価グループの一員として来日されたドイツのBarthel教授は、われわれの組織と活発な研究活動をみて、「まことに嫉妬を感ずるほどである」との感想を述べられました。ヨーロッパにおける溶液化学の泰斗の一人からこのような言業を頂くことはまことにうれしいことであり、最高の賛辞であったと思っております。事実、Barthel教授もドイツにおいて溶液化学者の組織化を考えているようですが、まだ実現されておりません。
日本における我々の研究分野は長い伝統もなければ学閥もない、まことに自由な雰囲気をもっています。このような雰囲気をいつまでの大切に保って行きたいと思います。
研究会の会長は何もしない役職とのことでありますが、一研究会会員として、皆様とともにわが国の溶液の発展に一層努力するとともに、この研究会が世界の溶液化学の研究に対してリーダーシップをとるような研究者集団となることを期待しております。

【溶液化学研究会ニュースNo.24(March 14,1994発行)より転載】

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