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運営委員長挨拶 このたび、溶液化学研究会の運営委員長としての役目を平田先生より引き継ぎ、就任いたしました。これまで、日本の溶液化学を代表する先生方が築かれてきた溶液化学研究会の運営を行う、非常な大役ですが、運営委員・会員の皆様のお力を借りつつ、本会をさらに発展させるよう頑張りたいと思っております。
ここで言うまでもなく、溶液化学は科学の創生段階から幅広い分野を含む非常に重要な分野であり続けております。現在でも、錯体化学・電気化学・生命化学はもちろんのこと、イオン液体や超臨界流体などの応用が期待されている工学的分野、クラスターや化学反応を解明する分子科学などに多くの貢献をし、またこうした分野からフィードバックを受けて溶液化学が進展していると言えます。そのため、分光と熱力学を初めとする幅広い実験分野の研究者が溶液化学者として活躍されていますし、理論でも統計理論、シミュレーション、量子効果を含む多くの優秀な研究者が溶液化学の問題に取り組まれています。しかし、このように多くの分野と相互作用しつつ発展していく溶液化学は、重要な位置を占めると同時に、逆にそれぞれの分野に部分的に取りこまれ、分野全体を見渡せる活動の場である溶液化学分野が空洞化しかねないという危険性をはらんでいるように感じておりました。これは、私自身が、これまでの研究生活で、固相中における電子励起状態の研究から出発し、気相中での孤立分子の分光学的研究を行い、最終的に溶液中での化学反応の研究に進んできたという過程で、少し離れたところから見ていたために感じたことかもしれませんが、外からこの溶液化学研究会がどのように見られているかを知るのも重要だと思います。本会は、このように見られる危険性は認識したうえで、外からの学問を吸収しつつ、統一概念を発展させられる討論の場を提供できる会として発展させて行きたいと思っております。溶液状態の複雑さと生命化学をはじめとする溶液の重要性を考えた時、まさに「最終的に」溶液に「進んできた」研究者を受け入れ、また外部へ発信できるような場になれれば、会として成功ではないでしょうか。溶液研究を何十年も続けて来られた先生方から見ると溶液化学に対しては浅学ですが、ちょっと違った斜め観点から溶液を眺めてきた私が、本会の運営委員長と言うのもそういう使命を帯びているのかもしれません。
溶液化学には、まだまだ新しい分野へ貢献できる力があります。実際、文部科学省の特定領域研究でも、溶液化学に関係した「水と生体分子」や「イオン液体の科学」が遂行され、本研究会のメンバーの活動によってそれぞれの分野を形成してきましたし、そのすぐ後に再び溶液化学研究会会員が多く関与した新学術領域研究「揺らぎと生体機能」や「水を主役としたATPエネルギー変換」が認められて活動を開始できたのは、溶液化学の重要性を多くの人が認識しているためではないでしょうか。
こうした力を認識し、これからもますます「溶液化学研究会」の更なる発展に力を尽くしていく所存ですので、よろしくご協力をお願いいたします。
京都大学大学院理学研究科
寺嶋正秀
〒606-8502 京都市左京区北白川追分町 京都大学大学院理学研究科化学専攻 光物理化学研究室内 溶液化学研究会事務局 Tel: 075-753-4026, FAX: 075-753-4000, e-mail: jimukyoku<at-mark>solnchem.jp |